grenelle165's blog

ふと考え、感じたことをできるだけ素直に綴りたいとおもいます

谷崎潤一郎『盲目物語』

もう11月です・・・仕事があまりに大変なので、平日の一日、一週間は本当に長いと感じますが、一ヶ月、一年の単位になると時間が経つのが本当に早いです。

心身ともに休まらない忙しい中でも細々と読書はしており、先週末は何年かぶりに、谷崎潤一郎『盲目物語』を読みました。

 

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戦国一の美人といわれた、織田信長の妹、お市の方の多難な人生を、お市の方に仕えた盲目の按摩師が、ずっと後年、大阪の陣も終わった後に、お客に物語るという設定で描いています。

この小説の好きなところは、ひとつは、文章のほとんどが平仮名で、時々漢字が混じる独特の文章です。なぜか不思議な色気を感じます(古文のことは全く詳しくないですが、仮名が多くて、不思議なところで急に漢字が入りますよね。あれを再現しているのでしょうか・・・)。

それから、落城が目前に迫った城中の光景と人々の心の揺れを、盲人の感覚を通じて非常に鋭敏に描いていること。浅井の小谷城柴田勝家の北の庄城、いずれの描写もとてもリアルで、真に迫るものがあります。按摩の手触りを通じて捉えた、お市の方の美しさ、艶やかさに関する描写も、非常に緻密でネバっこいところがありますが(この部分の文章は非常に長いです 笑)、さすが大作家、思わず引き込まれるものがあります。

そして、やはり、お市の方の生涯に象徴される、戦国時代に生きた人々の人生のせつなさ。「幸せな時もつかの間でした・・・」というセリフがぴったり当てはまるような、有為転変が激しい時代。「諸行無常」は、現代にも通じる、人生の本質だと思いますが、戦乱の世に生きたお市の方の悲運を通じて、そのことが凝縮されて描かれている作品だと思います。

それにしても、人間同士がほぼ日常的に命のやりとりをしていた戦国時代。死を目前にして、人間の本性、真の姿が浮き彫りになるんですね。史実かどうかはさておき、落城前の振る舞いをみると、浅井長政は英気あふれる立派な大将だったようですし、無骨な猪武者という印象が強い柴田勝家も、敗戦で離反した家臣を全く咎めず、恨みもせず、最後まで付き従った家臣には生き残りを薦め、それを喜んだ姿が描かれています。お市の方は、最後は柴田勝家とともに自害するのですが、あえて再婚した勝家が人格的にも立派だったことで、その悲劇的な最期もすこし救われる感じがします。

一般にはなじみの薄い谷崎作品とは思いますが、戦国時代ファンにもお勧めの一冊です。

ところで、昔、大阪に住んでいた頃、二日かけてバイクで琵琶湖を一周しました。途中で、浅井氏の居城だった小谷城跡に登りました。

随分前ですし、なぜかその時、写真をほとんどとらなかったので、細かい記憶がかなり薄れています。それでも、城跡の雰囲気、例えば、所々に堀と土塁の跡らしきものが残るさびしい城跡と、途中にあっただだっ広い空間(千畳曲輪)、謀反を起こした家臣の首をさらしたという石(首据石)、そして、小谷城の向こうの山まで、生い茂った草木を分け入って細い道を登ったという記憶があります。6月の休日で、新緑も非常に綺麗でしたが、人っ子一人いませんでした・・・怖くはないのですが、何となく落ち着かない気持ちで散策したのを覚えています。

近江 小谷城/近江の城郭

小谷城|観光 - お城めぐりFAN

小谷城跡 | 長浜・米原・奥びわ湖を楽しむ観光情報サイト

小谷の歴史|小谷城戦国歴史資料館

 

 〈小谷城からの北近江の風景。戦国時代からほとんど変わらないのでは?と思わせる、のどかでどっしりとした景色です〉

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<琵琶湖方面>

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<これも琵琶湖方面。竹生島も見えます>

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小谷城跡駐車場。愛車はホーネット>

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その晩は、浅井長政お市の方も湯治に来たという須賀谷温泉に泊まりました。当時私はまだ20台。旅館に泊まったことはほとんどなかったので、温泉が新鮮でとても気持ちよく感じた記憶があります。今はリニューアルして雰囲気も変わっているかもしれません。

須賀谷温泉(すがたにおんせん) -滋賀県長浜市の温泉旅館- 【公式ホームページ】

 

滋賀県の北の方はとても風光明媚でした。もうバイクは十何年も乗っていませんが、いつかまた気ままに旅したいと思います(キャンプとかしたいですね)。

<琵琶湖の奥のほう>

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吉野葛・盲目物語 (新潮文庫)

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